天空詩人作品集


written by 天空詩人


Oh!ドーベルマン



お前らはいつから
そんな風に飼い慣らされてしまったのか?
Oh! ドーベルマン
野性の血を思い出せ



犬のくせして 鋭い牙して
いったい何を狙っているのか?
Oh! ドーベルマン
最後の野性の血が騒ぐ



本当に欲しいものは何だ?
ドッグフードでいいのか?
おいしいのかドッグフードは?
違うだろ、ドーベルマン
違うはずだ
違うって言ってくれ
そうじゃないと俺は



Oh! ドーベルマン
最後の野性の王様
最後の野性の叫び声



Oh! ドーベルマン
何を考えているんだ、お前は!




天空詩人さん

♂・フリーター(兵庫県)


かつては仲間とポエムの同人誌を作ってらっしゃいましたが、最近はお休み中だそうです。ちょっと残念です。

comment
「私のような若輩者の作品をこんなにも大層に扱っていただき、こそばゆいやら、恥ずかしいやら」
   


選者のコメント

彼の作品の中で「まぐろ」の次に好きな作品。

「お前らはいつから」で始まる冒頭部分は、彼の全作品の中でも、かなりマトモな感じがする。かなりイイ感じだ。

「犬のくせして 鋭い牙して」のあたりもいい感じのリズム感があって、とても好きだ。

お、天空詩人さん、かなり腕を上げたな、と思った。

あ、でも気を付けろ!この作者には例の特殊な転調があるぞ!と警戒していたら、やっぱり登場した。

ドーベルマンのことを
「最後の野生の血が騒ぐ」と持ち上げた直後に出てくる「本当に欲しい物は何だ?」という質問。

この質問から始まるブロックから、またもや不思議な天空ワールドが始まる。しかも今回は巧妙にねじれた形で。

その結果、主人公は、ドーベルマンの前でボケたり、ツッコんだり、自問自答したり、一人で大混乱大会を始めてしまっている。

そのあげくに彼は叫ぶ。
「違うって言ってくれ そうじゃないと俺は」

・・・犬に向かって
「言ってくれ」と懇願するもどうかと思うが、それ以上に「俺は」に続く省略された部分がとっても気になる。「俺は」どうなるのか?ドーベルマンがドッグフードをおいしいと答えてしまったら「俺は」どうなってしまうのか?ものすごく気になる。

・・・そんな大いなる疑問を残したまま作者は最後の最後に来て、身も蓋もないことを言う。

「Oh! ドーベルマン 何を考えているんだ、お前は!」

そんな・・・と思わず絶句してしまった。最後に来てそんな質問されても・・・。もともと、何を考えてるのかわからないはずのドーベルマンの気持ちを考えようと懸命に叫んでいたのは彼自身(=作者?)だっただけに、最後の最後に
「何を考えているんだ、お前は!」と投げ捨てられてしまっても困ってしまう。でもこのポエム、好きだな。なんか、イイ!何がいいかと聞かれてしまうと困るけど。

いちおう選者は、この「Oh!ドーベルマン」と「まぐろ」を「天空詩人動物シリーズ」として分類している。2作品しかないのに、シリーズってのもどうかと思うが。

【追伸】
読者からの質問で「俺はメダカ!」はなぜ動物シリーズに入っていないのか?という素朴な質問を受けた。正直に答えると、忘れていた、というのが真相だ。でも、なぜ忘れていたのか考えると、「俺はメダカ!」と言いながら「俺はメダカじゃない!」と本人は言い張ってるし、肝心のメダカの描写が一切ないのでついつい忘れてしまっていたという気がする。そういったわけで、「俺はメダカ!」は動物シリーズには含めない!でも、含めようが含めまいが選者の勝手な分類なので社会的な影響は一切ない。不満な方はご一報を。本当にされても困るが。