天空詩人作品集


written by 天空詩人


まぐろ



大都会の夕焼けに
まるで錆び付いた歯車のように
うつむいた男たちの行列が
通りすぎてゆく



楽しいかい?
ほんとに生きてるって言えるかい?



真っ赤に燃えてる瞳の色は
ほんとは夕焼けの色なんだろ?



真っ赤に燃えてる瞳の奥で
ほんとは何かをなげいてる



そんなお前らにプレゼントするぜ
俺の心からのプレゼント




どうだい、見えるか?
俺からのプレゼント
ほうら、でっかいマグロだぞ



マグロの腐った瞳の中で
きっとお前は泣くだろう



泣きたい時は泣けばいい
涙流して泣けばいい



腐った瞳のその奥で
俺にはわかる
痛いほどわかる
マグロの気持ちが良くわかる




天空詩人さん

♂・フリーター(兵庫県)


かつては仲間とポエムの同人誌を作ってらっしゃいましたが、最近はお休み中だそうです。ちょっと残念です。

comment
「私のような若輩者の作品をこんなにも大層に扱っていただき、こそばゆいやら、恥ずかしいやら」
   


選者のコメント

天空詩人さんの代表作とも言える作品。

「大都会の夕焼けに」で始まる前半部分は、いかにも!と言った感じの青っぽい社会風刺ポエム。

ところが、
「そんなお前らにプレゼントするぜ」の部分からいきなりポエムのトーンが一変する。

言葉遣いもいきなりヤクザな口調になって、なぜか
「ほうら、でっかいマグロだぞ」と、主人公はいきなり巨大なマグロを目の前に放り出してくる。このマグロの登場、かなり唐突な印象だ。

タイトルに「まぐろ」となかったら何がなんだかわからないくらいに唐突だ。そしてそんな直後、彼は対象となる人間(=
「うつむいた行列の男たち」?)に向かって「涙流して泣けばいい」といきなりアドバイスを始める。

そしてそのあげくに彼は言う。
「マグロの気持ちが良くわかる」と。なぜだか自分で勝手に納得している。しかも「痛いほどわかる」らしい。だが、選者にはこの「マグロの気持ち」というものがよくわからない。

第一マグロに気持ちなんかあるのか?という擬人法を無視したツッコミは置いてとくにしても、なんだかなあと思ってしまう。だってマグロの気持ちなんかわかりたくないから。

でも好きだな、このポエム。だって
「ほうら、でっかいマグロだぞ」と言われたら許すしかないよ。

(ところで、なぜ作中では「マグロ」とカタカナ表記なのに、タイトルは「まぐろ」とひらがな表記なんだろう?深い意味があるような、まったくないような・・・)