天空詩人作品集


written by 天空詩人


ピエロズ・ナイト



「道化師」と書いて「ピエロ」 哀しいね
星空の酒場で天使たちがつぶやく



「道化師」と書いて「ピエロ」 寂しいね
天使たちの夜に今夜も乾杯



まぼろし色した都会のウソが
ツンとすまして笑ってら



俺の怒りは氷のハンマ−
大人たちのウソを打ち砕く



だけど彼女はわかってくれない
俺の気持ちの思いのたけを



涙色した雨よ 降れ降れ



俺はピエロ 哀しきピエロ 祭り囃子はピ−ヒョロロ




天空詩人さん

♂・フリーター(兵庫県)


かつては仲間とポエムの同人誌を作ってらっしゃいましたが、最近はお休み中だそうです。ちょっと残念です。

comment
「私のような若輩者の作品をこんなにも大層に扱っていただき、こそばゆいやら、恥ずかしいやら」
   


選者のコメント

順番的には前後するが、天空詩人さんの処女作(らしい)。

「道化師と書いてピエロ」で始まる冒頭部分は甘い香りに満ちた、いかにもポエムです!って感じの文体。

ところが、
「まぼろし色した都会のウソが、ツンとすまして笑ってら」 あたりから、口調がここでも急に変わってしまう。「笑ってら」「ら」がくせ者だ。まるでガード下の靴磨き少年のようなリアリティのない語尾だ。

しかも次のブロックでは、
「大人たちのウソを打ち砕く」と思春期特有の反体制の香りが登場してきて、そうかと思ったらいきなり「だけど彼女はわかってくれない」と、甘いラブソングの世界が飛び込んでくる。

そして
「涙色した雨よ 降れ降れ」と来る。これはもうほとんど演歌の世界だ。「まぐろ」の「泣きたい時は泣けばいい 涙流して泣けばいい」の世界に通じるものがある)

そして最後は
「俺はピエロ 哀しきピエロ 祭り囃子はピ−ヒョロロ」と、安っぽい駄洒落で終わっている。

このポエムを初めて目にした時、選者は頭の中で思考が停止してしまった。この作者の頭の中を一度でいいから
覗いてみたいという衝動に駆られてしまった。どこまで本気なのか、どこまでふざけているのか、さっぱりわからない。

このポエムを初めて読んだ時の衝撃はすさまじいものだったが、後に彼の「まぐろ」「Oh!ドーベルマン」と出会うことによって、この程度で驚いてる場合じゃないってことを思う存分思い知らされることになる。