Pilot Air Line
PAL031便
NAME WAR
〜完結篇〜






名前のために戦う





ちょうど今日(3/13)、
俳優の高知東急さんが東急電鉄から訴えられていた訴訟で
東急電鉄側が勝訴。
高知東急さんは高知東生に改名することになったそうだ。

・・・なんて、前置きからいきなり本題に入る。

機長が今回のPalm III騒動の中で、
ずっと名称問題にこだわってきたのには深い訳がある。

その最大の理由は、
機長がアンチ理科系(要は、もろ文科系)なせいで
「テーマが技術問題では他のサイトに負けちゃうな」と思ったからだが、
実はもうひとつ理由がある。

それは、かつてのMacintoshと比較されるほどに、
そのブランドが多くの人間からカルト的に支持されて
大成功を収めた製品であるPalmPilotが、
なんでまた、こうも簡単にその精神的バックボーンであるブランド、
つまり「名前」を捨ててしまうのか?に、
とっても興味を持ったからである。
(なお、三番目の理由は機長がこのHPの名称を
「パイロット航空」に変えたばかりで、
また変えるのかよ?と不安になったせいでもあるが。)



【復習】ところで、名称問題って?

改名問題と言ってもいい。
要は、2年前の春にデビューしたマシンが
「PILOT」だったのに、
2代目のマシンが「Palm Pilot」、
そしてこの春デビューの3代目が「Palm III」!
誰もが愛していた「Pilot」という名称を
なくすなんて信じられない!
・・・というのが概要だ。




さて、機長はこの名称問題について考えながら、
だんだんとその論理をすり替えてきているのに、
皆さんは気づいていただろうか?

024

「三代目襲名の余波と林檎の浮き沈み」


読み方はともかく、
名前が思いっきり変わってしまうというのは
意外だった

027

「速報!Palm IIIのかたち」


でも、どうなるんだろう、名称?!
機長はかなり「Palm III」説に傾きかけている。
理由は5つ。

(1)アジアの企業とは言え、
万年筆のパイロット社との
ややこしい名称論争を避けるため。

(2)Palm PCといういかがわしい名称で登場した
Microsoft社に真っ向から対立するため。

(3)短い名称の方がより認知度が高まるから。

(4)Palm Pilotという名称のために
Pilotと略されるより、
Palm (手のひら)と呼ばれた方が
製品の特徴が伝わるから。

(5)次の名称変更が楽だから。
(もちろんPalm IV)


・・・以上5つの理由からだが、
気持ちとしては「Pilot」は残して欲しいな。
このHPの名称および扉のデザインがかかってる!!

030

「運命の子の誕生」


結局、かねてから懸念されていたように
Palm PC問題が尾を引いてしまったようだ。
これから迫り来るMicrosoft社の
Palm PC包囲網と戦うため
には
これもやむなしってところなんだろう。



というわけで、機長の論理は、
だんだんと今回の改名問題の原因は
「Microsoft社のPalm PCへの対抗策である!」という結論へと
変化していった。

その理由は、記事中でも一部触れているが、
ウェブ上の多くのサイトで同様の意見を読んだからだ。
とくに、発表前に3Com社からプロトタイプまで借りて
レビュー記事を書いたPalmPower社のレビュー記事までが
同じ論調だったことは決定的だった。

やっぱり機長の思った通りだったんだ!
(ちなみに、これは名称問題とは別だが、
TIME誌の記事「Palm-To-Palm Combat」の論旨が
機長の「運命の子の誕生」に似ていたことも、
機長の気分をすこぶる良くしてくれた。



すごいじゃん、俺!
・・・くらいにいい気になりかけていた。
ところが、そこに冷水が・・・
ザバ〜〜〜ッ!


つ、冷たい!



その冷水とは、
AdvertisingAgeというサイトの記事
「3Com again changes name of hot-selling PalmPilot」だ。



この記事の中で、ライターは今回の改名問題をズバリ!
3Com社内部の人間に尋ねている。

登場しているのは、
3Com社のPalm Computing部門の
マーケティング副社長エド・コリガンさん。



彼が語る今回の改名問題の発言を機長訳でまとめると、
だいたいこんな感じ。


「この2年間、
ブランド名を変えてきた歴史の中で最悪の、
だけど苦心の作、それが今回のPalm IIIだったんだ」

「改名しなければなかなかった理由は、
決して僕たちのせいじゃない。
でも、しなきゃならなかったんだ。
おかげさまで製品はたくさん売れていたし、
マーケティングもうまくいっていた。
でも、今回の改名問題にはなんの影響もなかったんだ」

「これまで改名問題ではずいぶん苦しんできた。
でも改名するのは今回で最後だ。
もう悩んだり苦しんだりする必要はない。
あとは、この新しいブランド名を育てていくことに
集中することが出来る」



・・・と、ここまでさんざんもったいつけた後で、
ズバリ真相を語ってくれている。


改名の主な原因はやはり「裁判」だった。

ただし、機長が考えていたような
Microsoft社との裁判ではなく、
日本の文具メーカー
「株式会社パイロット」との裁判だった。



私の記憶が正しければ、
日本国内で株式会社パイロットが
3Com社の製品「PalmPilot」を
商標権侵害で訴えたのは
昨年の10月だったが、
実は、同社はそれ以前にフランスで
同じ問題で訴訟を起こしいた。

そして、同年9月にはその判決が降りていた。
その判決とは、
現行製品(この場合は「PILOT」
および「PalmPilot」)が
市場に出回っている間はその名称を認める。
だが、今後新製品を発表する場合には
「Pilot」という名称の使用を認めない!
つまり、3Com社の思いっきり敗訴だった。



この判決を受けて、
前述のように株式会社パイロットは
同じ訴訟を日本でも提訴した。
同じ訴訟はドイツ、アメリカ、
イギリスでも継続中である。
おそらくは同じ判決が続くだろうと
3Com社は判断した。

つまりこの時点(97年9月)で、
決まっていたことになる。
新型Palm Pilotの製品名に
「Pilot」の名称が残ることはないと!



以上が
エド・コリガンさんの改名問題への説明の概要である。

ところで、

この時点(1997年9月)でまだMicrosoft社は
PalmPCを発表(1998年1月)していない。

一方、もともとPalm Computing社が作った
「PalmPilot」の後継機種の名前を考える際に、
「Pilot」を使えないとなると、残る選択肢は限られている。
「III」はともかく、「Palm」という名称が
新製品の名称として使われることは想像に難くない。
(とくに、開発者Jeff Hawkinsさんにとって「Palm」は
「Pilot」の次に思い入れのある名前だ)

というわけで、今回の「Palm III」改名問題の原因は、
Microsoft社ではなかった。


機長からのお願い


ここまで読んで、
ちくしょう!
じゃあ、悪いのは株式会社パイロットの野郎か!
ようし、イタズラしてやるぜ!と思ったアナタ、
ちょっと待ってもらいたい。

機長の書いた
「Pilotの歴史1」
読んで貰えればわかるように、
現在の株式会社パイロットの元となった
並木良輔氏の「株式会社並木製作所」
(1918年創業)が
「パイロット萬年筆株式会社」に
改名したのは1938年、
つまり今から60年以上前である。
現在の「株式会社パイロット」に
改名したのでさえ1989年、
つまり、US Robotics社が
初代Pilotを発売した1996年よりも
7年前である。
向こう(株式会社パイロット)からすれば、
いきなりおんなじ名前を使ってきたのは
Palm Pilotの方なんだから。

実際、機長だってつい数年前まで、
「パイロット」と言えば「万年筆」の代名詞だった。
みんなもそうでしょ?
株式会社パイロットを
責めるのはお門違い
ってもんだ。






さて、
前述の記事(「3Com again changes name of hot-selling PalmPilot」)は、
改名問題だけでは終わらない。

マーケティング副社長エド・コリガンさんはこう語っている。


(「Pilot」を失った今、)
今度は我々は「Palm」を守らなければならない。
そのために今、Microsoft社のPalm PCと戦っている。
実際、ドイツとイタリアでも係争中だ」




これに対して、Microsoft社の広報担当者はこう反論している。


「Palm PCは商標登録ではなく
カテゴリーの名称に過ぎない。
だから、我々は彼ら(3Com社)の商標権を
侵害しているとは言えません」



もちろんエドさんは、再び反論している。


「株式会社パイロットがPalmPilotを訴えた問題と、
今回、我々がMicrosoft社のPalm PCを訴えた問題は
次元が違う。
前者は別のカテゴリーで
たまたま名称が同じだっただけ、
でも後者は直接ライバル関係にある同じカテゴリーで
名前を似せてきた。これは悪質だ、と」



さらに最後にこう〆ている。


「Microsoft社は市場を混乱させて、
我々の成功を横取りする気らしい。
同じような名前の同じような製品を
発売しようとするなんてのは、
まともな企業のやることじゃないね」



以上が、同記事の後半の概要である。

ここまで書いて、ふっと思う。
今回はかなり原文に近い翻訳文を載せてしまった。
非常にナイーブな問題であることと、
当事者の貴重なコメントだったのでこうなってしまったが、
AdvertisingAgeの皆さん、
このことで機長のことを訴えたりしないでね。

頼む。

万一この「パイロット航空」が同サイトから訴えられた場合、
あっさり「パーム航空」に改名して逃げちゃおうかな、
・・・と、思ってる。





もうひとつの日常





話は変わって、林さんのページでも紹介されてたけど、
増田さんの「Pilotな日常」というページがなかなかいいです。
Pilot関連のHPの中ではオリジナリティがあるというか、
新しいパターンです。
まだまだ始まったばかりのようだけど、これからが楽しみ。
頑張って下さい。

どんどんいろんあタイプのPilot関連サイトが増えるのは
とってもいいことだ、と機長は思う。

ところで、予告したDatebk3はどうなったの?

あ・・・。

1998年3月13日


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