Pilot Air Line
PAL011便
Datebk3を丸める?
〜round durationの秘密〜


なぜか「蘭学事始」

江戸時代に「蘭学事始」という本が書かれた。


当時のオランダの医学書を日本語に訳したもので、
翻訳者は杉田玄白とか前野良沢という
当時の日本を代表するドクターたちが当たった。
ところが当時はオランダ語の辞書なんて日本では、
1996年以前の新型PowerMacみたいに手に入らない。
たまに手に入ったとしても、
KDICが誕生する前のPalm Pilot用辞書みたいに
日本語なんか載ってない。

日蘭辞書がない以上、オランダ語とオランダ語の蘭蘭辞書という、
名前のわりには楽しくなさそうな辞書を片手に
医学の専門書を訳すしかなかった。こりゃ大変だ。
でも、これを訳さなきゃ日本の医学の夜明けは来ない!
たぶんそんな情熱に燃えていたDr.杉田たちは、
一語一語仲間と相談しながら翻訳を進めたという。
有名なエピソードとしては
「○○○○」という形容詞の意味がわからず、
辞書に出ていた「鼻は○○○○だ」
「落ち葉を庭の中央に集めたら○○○○なった」という例題から
意味は「うずたかく」じゃないかと導きだした。
でも、これだけで半日以上を要したという。
なんて効率の悪い話、と思っていたが、
今回、ちょっとした私の一言から、
似たような経験をすることになってしまった。

あ、また前置きが意味なく長くなってしまった。

でも今回は、実は話の長さのわりには中身はほとんどないので、
忙しい人は最後の数行だけ読めばいいよ。
要は、私の不用意なコメントのために、
江戸時代のDr.杉田みたく頑張ってくれた、
ある人への感謝を込めてこの文章を書いてます。

ま、ある種のクイズだと思って、
正解を想像しながら読んでみて下さい。



Round Durationsって?

以前「DateBook系ソフトの劇的な進化で嬉しい悲鳴!」の中で、
読者の皆さんに以下のような質問を投げ掛けたことがある:


ところで1ヶ所、不明なところがある。
「Option」メニューの
「Preference」ダイアログにある「Round Durations」という
チェックボックスだ。
解説書の原文を読むと、
下記のように書いてあるが私の拙い英語力では
意味がわからない。
わかる人がいたら教えて。

Adds an option to round durations to the next hour,
so the default duration merges with the next hourly time interval
(thereby not wasting one slot in the agenda display when,
as is often the case, the duration is not really relevant).

機長の癖に英語が苦手な私は
Datebook系ソフト「Datebk3」の解説書の中にあった
「round duraions」の意味がわからん!てな話だった。



実は今だから話すが、
機長は「round(丸い) duraions(持続時間)」を
「円グラフ」のことだと思っていた。
ところが、その意味だとこの文章の意味が通じない。
どう考えても、このソフトに「円グラフ」は出ないだろう。
第一、いきなり一行目にある「次の時間までの円グラフ」って何だよ?
ってな話になる。



だもんで、前述のように「わかる人がいたら教えて」となった訳だ。

そしたら、来たのさ、早速。

内山さん、ありがとう!


round=四捨五入?


roundは四捨五入する、とか丸めるという意味ですが、
ここでは切り捨てるという感じに使ってますね。

時間を示すバーが重なって、
つながってしまうのを避けるために
縮めるオプションを加えた、ということのようです。

ですから、その場合はバーの長さは、
実際の時間に必ずしも比例しないということになる、
と書いてありますね。

【from 内山さん】〜抜粋〜

なるほど!これなら意味が通じる。
辞書を引いてみると、
「round」の意味の中に「整数」というのがある。
なるほど「四捨五入」か!
「丸める=四捨五入」ってのはわかるな。

さ、意味もわかったところで、この内山さんの解釈をもとに、
実際にPalm Pilotで標準のDatebookとDatebk3を使って機能を比べてみた。
ところが、内山さんが発見してくれたような機能の差が見つからない。
内山さんの言ってる「時間を示すバー」というのは、
どう考えてもDaily画面のStart TimeとEnd Timeを結んでる
逆「コ」の字型のバーしかない。



でも、ちょっとおかしいぞ。
標準Datebookだろうが、
round durationsオプションをONにしたDatebk3だろうが、
同オプションOFFのDatebk3だろうが、
どれでも時間が重なればバーもしっかりとくっついている。
しかも、原文にあった
「not wasting one slot in the agenda display
(=agenda画面の貴重な1スロットを犠牲にしない)」
というのとも矛盾している。

あれ、おかしいぞ。

てことは私は何か読み違いをしているのか?と思って、
以下のようなメールを内山さんに送った。


ところで、せっかくのお返事に
質問返しというのは大変失礼かもしれませんが、
ここで「バー(duration)」と表現されているのは、
なんのことなのでしょうか?
「agenda画面の貴重な1スロットを犠牲にしない」
とか書いてあるのを見ると、
Dayly表示の時間の左横にある縦棒のようにも思えるのですが、
実はまだ意味がわかっていません。
(round durationsオプションを使ったDatebk3と、
通常のDatebookソフトとの差異がわかりません)
以上の点について、もしもご存知でしたら、
お教え願えないでしょうか?
HPじゃ、いろいろと偉そうなことも書いてますが、
実はかなりの初心者で、
しかも横文字が大の苦手なものですから。
ほんとにわがままな質問でゴメンなさい。

【from 機長 to 内山さん】〜抜粋〜



すると、なんと内山さん、
わざわざDatebk3作者に質問を送ってくれました。
そうして届いたのが以下のようなメールです。


返事がすぐ来ました。
Datebk3の作者は筆まめな方のようです。
で,私の解釈が間違っていることが判明しました(^^;)。
以下にメールの本文を張り付けます。



そうそう!
Datebk3のReadMeなんかも異常な書き込み
(とくに将来の計画の部分)があって、そんな予感がありました。


作者からの答え


I have one question.
But, I don't understand what happens by the round function.
I don't find out any changes by the choise. Could you explain this?



(機長訳)
質問でごわす。
round functionをONにしても何が起こったのか確認できないでごわす。
なんか、ちっとも変化してないように思うんでごわすが、
どういうことでごわしょう?


内山さんが鹿児島方面の方らしいので、
鹿児島弁風に訳してみましたが、
機長は鹿児島行ったことないので、
かなりいい加減な鹿児島弁です。
鹿児島方面の方、怒らないでね。
そして内山さん、ごめんなさい。


上記が内山さんの質問。
で、Datebk3の作者がこれに答えてくれてます。


<<<Turn off the round duration option.

Select the 4pm (for example) timeslot and start typing
in an entry called TEST.

Tap on Details and the time, and change the start time
to 4:10pm, you will note the end time has changed
to 5:10pm since the default appointment duration is one hour.
Tap ok, and note that there is an extra line
between 5pm and 6pm for the end time of the appointment at 5:10pm.

Turn ON the round duration option and do EXACTLY the same thing.

This time, when you change the start time to 4:10pm,
the end time STAYS at 5:00pm because it is "rounding" the end time
to the next hour.
The advantage isthat you now have your appointment at 4:10pm,
but there is no entry in the
agenda for 5:10pm for the end time (as was the case earlier).

A small feature, but if you have lots of appointments
where the duration is not important,
and which do not start on the hour, it avoids much wasted
space in the day view!

Cheers!
CESD



以上の文章について内山さんが概訳してくれてます。


結局、defaultのdurationの終了時間を
切り捨てる機能だったわけです。

4時から始まるイベントを作ると、
自動的に5時がそのイベントの終了時間に設定されます。
これがdefaultのdurationの
設定値(1時間)なわけです。
detailの欄で4時10分始まりに変更すると、
終了時間も5時10分に移る。
ところがこのround durationをonにしてあると、
イベントの継続時間は切り捨てられ50分となり
終了時間は5時のままとなる、
というわけです。確かに、たとえ開始時間を4時59分にしても
終了時間は5時になることを確認しました。
もちろん終了時間は変更可能で、
default値がそうなっているというだけです。



さらにこんなコメントを寄せてくれました。


作者自身がいっているように確かにa small featureで、
「なあんだ,それだけ?」的な機能でした。
便利かといえば、そうなんでしょうけど...



確かに機長も、
この内山さんのメールを一回読んだだけでは
なんのことやらわかりませんでした。
なんとなくわかったような気になりながら、
でも、なんでそれが「スペースの節約」になるのか疑問でした。




で、結局、こういうことなんだな、と気づきました。
上の例題で言えば、午後5時からのアポがあった場合には、
確かに余分なスペースは節約できる。
このことだったのか!と理解しました。



確かに、作者も言ってる通り、ささやかな機能だ。
でも、アポがめちゃくちゃ多い場合にはまあまあ役立つ機能だと言える。


最後に言い訳です。
ドキュメントの英語だけではこの機能のことを理解するのは
ほとんど不可能だと思います、という気がします。
(ちょっと気弱になってます)

【from 内山さん】〜抜粋〜



私もそう思います。
あの文章だけで理解するのは無理です。
もしもこのサイトを読んでる人の中に、
一発であのround durationsの解説の意味がわかった人がいたとしたら、
おめでとう!

と言うわけで最初にも断った通り、
今回は中身はround durationと同様、「ささやか」です。
最後まで読んじゃった人、ごめんね。
内山さん、これからも何かあったら教えて下さい。




あ、またやっちゃった!
内山さん、そして鹿児島の方面の皆さん、
ごめんなさい!


1998年1月17日

皆さんの地方の雪害は大丈夫ですか?


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